一年を通じた
実りへの感謝「新嘗祭」
五穀豊穣への感謝を告げる祭り
三嶋大社で新嘗祭が行われました。
新嘗祭とは、古くから全国で行われている、新穀に感謝する収穫祭で、大神様にその年に収穫された新穀並びに新穀で醸した新酒(白酒・清酒)をお供えします。その年の五穀豊穣を祈る春の祈年祭に対し、秋の感謝の祭にあたります。尚、年ごとの新嘗祭に対し、天皇即位後初めて行われるこの祭は大嘗祭と称します。
毎年、三嶋大社の祭事と同日にJA・三島商工会議所青年部が協力し、宝船いっぱいの箱根西麓三島野菜を奉納しています。その前日の22日には、野菜を奉納する農家が瀧川神社で禊を行いました。
*瀧川神社で行われた禊の様子
*瀧川神社は三島市川原ヶ谷に鎮座し、祀戸神である「瀬織津姫命」をお祀りする 神社です。古くは、民間信仰の場所として瀧川不動と云われ、水の信仰を集め修 験者のあつまる禊道場でもあったという場所です。
新嘗祭の成り立ち
毎年10月17日に、その年初めて穫れた最初の初穂を天照大御神に召し上がっていただく「神嘗祭」が伊勢神宮で行われます。その同日、「神嘗祭」をお祝いするための「神嘗奉祝祭」が全国の神社で行われます。そしてその年の収穫が終わる頃、一年の感謝を告げるため行われるのが「新嘗祭」です。
春には田植えを行い、秋には収穫を行うため、日本人はかつて ”春”と”秋”を特に意識していたと三嶋大社宮司 矢田部さんはおっしゃいます。その証拠に、春には「祈念祭」や「酉祭」という五穀豊穣を祈るお祭りがあり、秋には「神嘗祭」「新嘗祭」という五穀豊穣に感謝を告げるお祭りがあります。稲のサイクルで1年の流れを感じ取り、その中で神様への祈りと感謝を捧げてきた日本人。弥生時代から始まった稲作は、日本人の信仰の原点とも言えるようです。
飛鳥時代から続く「新嘗祭」は、天皇陛下が宮中三殿の神嘉殿で初穂を神々にお供えし神恩に感謝された後、陛下自らもお召し上がりになる宮中祭祀です。
*三嶋大社で行われる「新嘗祭」の様子 三嶋大社では、「新嘗祭」のほか五穀豊穣を祈り感謝するお祭りとして「酉祭」 を古来 4 月・8 月・11 月に行ってこられました。そのうち 8 月のお祭りは、「例祭」 と呼ばれ、年間で 151 回あるお祭りのうち、” 最も大切なお祭り” とされている そうです。
*三嶋大社宮司 矢田部盛男氏(やたべもりお)
大学を卒業された後、平成 7 年より伊勢神宮にて 4 年、その後平成 11 年から三 嶋大社で神職を務められた矢田部氏は、平成 27 年 3 月に三嶋大社宮司に就任さ れました。掃除や朝拝といった毎日のお務めに加え、参拝される多くの方が気持ちよくお参りできるよう受 け入れ態勢を整えていらっしゃいます。
箱根西麓三島野菜と新嘗祭
西麓地域の野菜を育てる上で、五穀豊穣への感謝を告げる新嘗祭はとても大切にされているお祭りです。
「野菜の歴史は、稲作が日本に浸透するよりも前から紡がれているもので、根深く日本人の記憶に刻まれているはずです。その土地で採れたものを神様に召し上がっていただき、神様に感謝を申し上げるというのは自然な在り方なのでしょう。」
「特に、伊豆半島の成り立ちや形成と深く関わる地場のものを召し上がっていただくことは、もちろん大切なことで、箱根西麓三島野菜の奉納は、そういう意味で大変神様に喜んでいただけていることでしょう。」
と矢田部さんはお話しくださいました。
田植えから収穫まで、1年のサイクルを感覚的に農耕の中から感じ取っていた日本人は、「目に見えないもの」を大切にしてきました。収穫にしても、決して自分たちの力だけで叶ったものだと思わない。そんな信仰と、一年を通じた「実り」への感謝を代々紡ぐ場所、それが三嶋大社です。これからも1年の感謝を捧げるべく、箱根西麓三島野菜の奉納を続けてまいります。